潰瘍性大腸炎

大腸の粘膜に炎症が起きて、下痢や腹痛が起こる病気です。

 大腸に炎症が起きることによって、大腸の粘膜が傷つき、ただれたり(びらん)、はがれたり(潰瘍)することで、腹痛や頻回の下痢、血便などがみられます。
 病気の原因は、遺伝的な要因に腸内細菌や食餌など様々な環境因子が重なり、通常は身体を防御すために機能している免疫に異常をきたすことで生じると考えられています。
 腹痛や下痢・血便などの症状がある状態を活動期、治療により症状が治まった状態を寛解期と言いますが、この活動期と寛解期を繰り返すことがこの病気の特徴です。
 したがって、治療により一旦、寛解期に入っても、再び大腸に炎症が生じる
(再燃)ことから、再燃を予防するために長期にわたる治療が必要になります。また、発症後、長期経過とともに大腸癌の危険性が高まることから、定期的な検査を受けることも非常に重要です。

 

潰瘍性大腸炎の患者数

 1970年代は稀な疾患とされていましたが、その後増加し続け、2013年度末には約15万5,000人の患者さんが登録されています。男女比はほぼ同じで、発症は20歳代がピークです。

 

病変の範囲と重症度

病変の範囲

 潰瘍性大腸炎の病変は、基本的には直腸から口側へ広がっていきます。
病変が直腸に限られる直腸炎型、脾彎曲までに留まる左側大腸炎型、脾彎曲を超えて広がる全大腸炎型の3つに分けられます。

病気の重症度

 排便回数、血便の程度、発熱、脈拍、貧血、赤沈の程度によって、重症、中等症、軽症に分けられます。軽症では、通院による治療が可能ですが、重症は入院治療が必要となります。

潰瘍性大腸炎の内科的治療

 軽症~中等症の活動期の寛解導入には、5-アミノサリチル酸(5-ASA)の経口剤、5-ASAやステロイドの局所製剤(坐剤、注腸剤)が用いられます。
 病変範囲が狭ければ局所製剤だけによる治療も可能ですが、病変が広い場合や早期の治療効果を期待する場合には経口剤と局所製剤の併用療法が行われます。
 より症状が重くなると、ステロイドの経口剤や注射剤が上記の治療に加えて用いられます。ステロイド剤は長期に使用する薬ではないため、効果が得られれば徐々に減量し投与を中止します。しかし、患者さんの中には減量・中止の際に再燃する場合があり、このような患者さんには、アザチオプリンなどの免疫調節薬が用いられます。
 さらにステロイドの経口・注射剤で効果が得られない場合は、⑤血球成分除去療法(LCAP、GMA)が用いられたり、抗TNF-α抗体製剤のインフリキシマブやアダリムマブ、免疫抑制剤のタクロリムスやシクロスポリンによる治療が行われる場合もあります。
 これらの治療で寛解導入できたら、再燃を予防するために、基本的には5-ASA製剤による寛解維持療法が長期にわたり行われます。
 なお、これらの内科的治療で効果が認められない場合や大腸に穴が開いたり、大腸癌を合併している場合などは外科的治療を選択することになります。

服薬遵守と再燃率

 潰瘍性大腸炎は、再燃を予防するために長期にわたって5-アミノサリチル酸製剤(5-ASA製剤:ペンタサ®、アサコール®、サラゾピリン®)の服用が必要です。
 2年間の5-ASA製剤の服薬状況を調査した結果、指示どおりにきちんと服薬を守っていた患者さん(服薬遵守群)の約90%が寛解を維持できていました。一方、服薬を守っていなかった患者さん(服薬非遵守群)では約40%と低く、6割の患者さんが再燃したことが報告されています。
 症状がない寛解期でも、服薬遵守することで再燃を予防し、長期にわたって寛解を維持することができます。さらに、5-ASA製剤の服薬の継続は、潰瘍性大腸炎に合併する大腸癌発症のリスクを低下させることも報告されています。

食事で気にすること

 活動期は、食事が病状や全身の状態に大きな影響を与えるため、医師や栄養士などの指導に従い、食事に注意することが特に重要になります。活動期では、腸管からの栄養の吸収が下がり、体力を消耗しがちです。また、下痢で水分や電解質も失いやすいことから、おかゆや麺類などエネルギー、水分、塩分を補給できる食事が勧められます。たんぱく質としては、卵、大豆食品、魚類が勧められます。反対に、腸に負担をかけ、下痢や腹痛を悪化させる高脂肪食や食物繊維、刺激の強い香辛料、アルコール類、炭酸飲料は控えなくてはなりません。
 寛解期にはバランスのとれた食事を適量摂るように心がけましょう。脂っこいものや刺激のある香辛料などはお腹に負担がかかり、あまりお勧めできませんが、人によって体に合う食品とそうでない食品がありますので、状態のよいときにメニューを試しながら、自分にとっての合う・合わないを把握しておくことが大切です。

妊娠・出産

 女性の場合、潰瘍性大腸炎だからといって不妊率が上がるということはありません。ただし、活動期に妊娠した場合に流産や早産などの危険性が若干高くなるという報告があります。また、まれですが活動期の妊娠により潰瘍性大腸炎の症状が悪くなることもあります。妊娠を希望する場合には寛解期に妊娠されることが望ましいでしょう。
 妊娠中、医師が薬を必要と判断した場合に服用可能な薬としては、5-ASA製剤やプレドニゾロン、TNF-α製剤などが挙げられます。逆にアザチオプリンなどの免疫調節剤は胎児に影響を及ぼす可能性があるため、妊娠を希望する場合には主治医の先生によく相談しましょう。
 男性の場合も、服用薬によっては注意が必要です。サラゾスルファピリジンは、精子の数や運動能を低下させるため、男性不妊の原因になります。しかし、この影響は服用を中止すれば2ヵ月程度で戻ります。 
 いずれにしても、女性も男性も、主治医の先生に赤ちゃんを希望していることを伝え、
潰瘍性大腸炎の管理や治療薬についてよく相談しましょう。