上腸間膜動脈症候群

聞きなれない病名ですが、食後の胃もたれや、吐き気、腹痛などのため胃カメラなどの検査を行っても異常がなく、ストレスやうつが原因と診断される方の一部に、この病気の方がいます。
十二指腸から空腸への移行部は、前方から上腸間膜動脈に、後方から腹部大動脈に挟まれた位置にあります。これらの血管による締め付けが強くなると腸閉塞症状をおこし、急性の場合には、食後の腹部膨満、嘔吐などをきたし、慢性の場合には、間欠性腹痛を起こします。症状は、食後に悪化します。
体位によって症状が変化します。上向きより、すわったり、腹ばいで症状が軽快します。上腸間膜動脈の締めつけ力が弱くなるからです。
この部位は、通常は、脂肪組織やリンパ組織のクッションによって守られていますが、 急激な体重減少に伴って、上腸間膜動脈周辺の脂肪組織のクッションがなくなると、前後方から締めつけられることによって、腸閉塞を起こします。

診断には腹部CTや超音波検査が有用で、腫瘍などの鑑別疾患の除外とともに、食事内容により拡張した胃、十二指腸を認めたり、大動脈と上腸間膜動脈の間にしめつけられた十二指腸を認めることで診断されます。また上腸間膜動脈の起始部が鋭角であることも参考になります。

この病気の治療は、通常は悪化の要因を取り除くことにより解消します。適度の体重を維持し、急激な体重減少をさけること。一度にたくさん食べすぎないこと。お腹の締め付けを避け、姿勢をあまり前のめりにしないように注意し、特に⾷後はリラックスした姿勢を取ること、体位は⼀般的には仰向けで悪化し、うつ伏せや左を下にすると改善します。
成長期に急に身長が伸びたり、体脂肪率が減少すると同様の症状がおこることがあります。心身症と診断されている中高生もおりますので、このような症状がある方は一度、消化器内科での検査をお勧めします。